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仔犬のすてっぷ

第20章 奈落のなかで・・・(Hシーンあり〼)


「・・・逃げたんじゃ、無い。離れたんだ。
うちの家族の方が身軽だったから。地主の貴女の親と違って、うちはタダのサラリーマンだったから……」

「ウソつくな!うちの親は、あんた等家族は私から逃げるためにあそこを離れたって……慰謝料だって受け取らずに、さっさと引っ越したって!」


・・・この人…本当に何も……教えられていないんだな・・・・・
いや、多分周りは色々言っているけど…そこから彼女は…自分の力で真意を読み取る事が出来なかったんだ……。


「離れた?証拠はある?そんなモノ、無いでしょ!口から出任せ・・・」

「・・・証拠なんて、無いよ。
そんなもの、貴女の親とウチの親のやり取りなんて記録は無いしね・・・だけど、ちょっと考えたら分かるはずだよ。
 貴女の親も、僕の親も…
どちらもちゃんと “親” だったから・・・
親として、自分達の子供を大切に思っていたからこそ・・・
僕と貴方を離れさせたかった、ソレだけの事なんだよ。
 あの地域の周り人達の、田舎特有の余所者外しの変な噂話なんかに流され、晒し者にされる。
貴女の親も、僕の親も、そういう偏見から我が子を守りたかった…そういう事なだけだよ」


 傍から見れば、確かに余所者だったうちの家族は常に地域住民からの風当たりは強く…肩身が狭くなってしまって逃げ出したように見える。

事実、蒼空に外葉を話した時は…彼はひどい地域だ、と…僕らを哀れんで腹を立ててくれた。


だけど、それは田舎だから…保守的な人が多いのは仕方が無い事で。

問題は、それをどう受けとめるか…なんだ。



「僕はあの後すぐあの土地から離れたおかげで、世間が狭かった事に気がつけた。あの地域の人達だけが悪いんじゃない、自分達もそれに染まって卑屈になってたから、虐げられたんだって理解できたんだ。
……結局、虐められる方にも少し落ち度があるんだよ、明美さん」


「………長々と色々言った割には、結論はそれかい?君子か何かにでもなったつもり?
アンタのは、結局タダの自己満足な説教なだけだよ!
他人の愛を語る資格は無いさ!」



・・・・・確かにそんなものは無い。
所詮価値観はひとそれぞれだから。




・・・でも。
時間は稼げた。


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