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仔犬のすてっぷ

第25章 仔犬達のワルツ3 アキラ VS サラ



「・・・スキが、無い……」


 マーシャルアーツなら、蒼空が使い手な事もあり慣れているはずなのだが、サラの動きは蒼空より早かった。

 しかも技の切れ目にしっかりフェイントが入ってきて、それがフェイクか実技かの判別が難しいのだ。
実際3度ばかり技の切れ目を狙い、チョッカイ出してみたものの……
 危うく返し刀のカカト落としを受けそうになったり、距離をつめようとした途端にローキックが “置いて” あって被弾したり、振り切ったパンチ後に殴りに行ったら裏拳が頭をかすめたり……で、ローキックはともかく、他の二つは被弾したらタダでは済まない内容だ。
それに、唯一被弾したローキックの威力の低さも気になっていた。


「……相手の技のスキが取れないなら……後はコチラから仕掛けて崩すしか無いんだが……」

 パンチひとつにしても、ひとつ出せば3つが返ってくる始末で、ゴリ押し状態を作ることすら難しい。
更に厄介なのが・・・


「ちょっと、少しくりゃあ手を出して来たらどうなん?きとんきとんに神経尖らしゃあ、ちょびっとくりゃあ、出来るやろが?」

 この名古屋弁でヤル気が削がれる事に、アキラは閉口していたのだった。

(……コレ以上、時間はかけたくないし……やるしか、無いか…)


「……サラさん。依頼人が警察に捕まっている以上、僕達の戦いは無意味です。手を引いてもらえませんかね?」

 もちろんそんな簡単に事は進むはずは無いが、金で雇われているなら、交渉次第で何とかなる可能性はゼロではないハズだとアキラは考えていた。


「・・・おみゃーわ(お前は)、うちと同じ立場なら、おぜぜ(お金)で何とかなると思っとりゃあすんか(思っているのか)?」

「・・・ですよね〜…(汗)でも、意味が無いのも事実なんですよ。僕としてはこのまま穏便に済ませたいんですが……」

「……意味ならあるでよ?
こうしてうちらが戦えばトーマスが霧夜を捕まえる為のスキが作れるんだわ」


(なるほど…やはりバウンティハンターのこの二人はそっちが本命か……)



威力の低い彼女のローキックの意味は、それで合点がいく。しかし・・・



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