テキストサイズ

仔犬のすてっぷ

第36章 36章 これから先は・・・


 彼らの紹介と、朝礼が済んだあとは開店準備と店内清掃を行う。

元々客商売で生活してきている新人3人はかなり手慣れた感じで事を行ってくれていた。


「なんか、あまり教える事は無さそうね」

 淡海ちゃんが彼らの動きを見て残念そうに言うのを聞いて、僕はその理由を聞いてみた。


「だってさぁ…私、新人君がワタワタしているのを見るのが好きなんだよね〜。
なんていうか…初々しさっていうの?それを見るのが楽しみなんだけどさぁ…あの三人にはそれは期待できそうにないよね」

「…ま、まあ…彼らも元々接客業で、水商売経験者になるわけだからね。パチンコ屋も水商売みたいなものだし…パチンコで遊んだことがある子ばかりだから、昨日基本的なこと教えてる時もすんなり覚えてくれたから・・・」

 意外な嗜好で新人君を見ていたんだなぁと淡海ちゃんの趣味に苦笑いしながら、僕は蒼空の姿を目で追っていた。


(…意外と制服が似合ってるんだよなぁ…結構ダサい制服だとばかり思っていたのに…着る人間が違うとこうも違って見えるもんかねぇ…)

 黄色と黒のカラーが独特な、某有名デザイナーがデザインしたと言われる制服は男女問わず不人気だったけど…モデルみたいな人間が身につけると格好良く見えてしまうから不思議だ。


「・・・なあ?なんか、外が騒がしくねぇか?」

不意にこちらを見た蒼空と目が合って、一瞬ドキッとしたけれど…すぐに彼の言う通り、店の外が騒がしいことに僕も気がついた。


「・・・パトカーの…サイレン??それも、複数……こっちに近づいてきているみたいな…?」

 “本日は緊急お客様感謝デー!高設定、超甘釘は当り前の天国まつり" と、なんの捻りもないけれどうちの店長の事が解ってたら列ばずにはいられない宣伝チラシを撒いて、店の外にも壁に横一列ぐるりと店を囲うように貼り付けた効果は絶大だった。
外には回転を待つお客様が、すでに長蛇の列を作って開店を待っている。
そのお客様達のざわつく様子が店内にまで伝わってきていた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ