テキストサイズ

双龍の嫁

第3章 茶話会



「お姉さまがた! この、見た目はつややかですが黒くてあやしげな……でも香ばしい香りと味わいの、これはなんでしょう?」


目に付いた食べものをまず口に含み、そばかすのわずかに残る頬に手を当てて、若い娘に相応しくはしゃいだ可愛らしい様子をみせているのは、璃湖(りこ)という火龍の花嫁です。

幼げな風貌。 昨晩そう風龍は称していましたが、その細く小さな体型は隣に座している土の花嫁と並ぶと、ことさらそれが際立ってみえました。


「でも、こんな高価そうなものをわたしたちがいただいても良いのでしょうか?」

「沙耶さんたら、謙虚なのねえ。 龍の花嫁なんて普段は夫に合わせて粗食なのですから、こんな時ぐらいは構わないでしょう」


取り皿に取ったお菓子を身を乗り出しそうな勢いで、いちいち熱心にそれらを観察してから口に運んでいるのは土龍の花嫁、潤香(しゅんか)です。

すっきりとひとつにまとめられた髪が、ともすればやや肉感的な身体と優しげな垂れ目がちの表情をバランスよく引きしめています。


「んんっ。 口に含むとほろ甘く、噛むとまるで噂にしか聞いたことの無い、揚げたお砂糖のよう……」


潤香がまるで頬でも蕩け落ちそうな、至福の表情をうかべてぼんやりと視線を空に浮かせました。


ここは広い敷地のある茶屋内の、萱の屋根に覆われた席のひとつです。

同じような卓は幾つかあるもののそこに人の姿はなく、約束の場所に着いた時も店主が少し顔を出しただけでした。
ただちょっとした宴のように、席には茶話会の場が用意されていました。


四龍の花嫁の集まり、といって歓迎はするものの、あまり龍とは関わり合いたくない。
敬いの心はあれど、畏れのほうが勝っている。そんな人びとの心が垣間見えました。



ストーリーメニュー

TOPTOPへ