蜜と獄 〜甘く壊して〜
第3章 【秘密裏な罠と罰】
秋吉亮平くんの入院中は毎日のように堤さんと顔を合わせていた。
私が来れば少し外の空気を吸ってもらって、仕事の電話やそのまま会社に行く事もあった。
正直ここまでする必要もないかもって思うけど、私たち以外はやはりお見舞いなど来ていないみたいだ。
知らせてないだけだろうけど、この際めちゃくちゃお節介してやろうと企んでいる。
「あ、リリカさん!」
仕事中はそんな笑顔見た事なかったけど、笑顔で居てくれる事にホッとして「リンゴ食べる?」なんて世話を焼く。
看護師さんの間では私が彼の恋人だと認識されていたようで。
彼にはずっと源氏名で呼ばれてるからそんな気持ち一切なかったけど、「彼女さん」と呼ばれ困惑した。
そういえば堤さんも彼の前では私を源氏名で呼んでくれていたからだ。
本名なんて知ってるの堤さんくらい。
「すみません、誤解されちゃって」
シュン…とする彼に首を振った。
そりゃ毎日のように顔出してたら周りはそう思うのが自然だ。
どちらかと言えば家族に近い感情なんだけどな。
どう思われようと勝手にどうぞ、歳も近いしね。
「こっちこそ、私なんかでごめんね」
「いえ、リリカさんには本当に感謝してます……謝らないでください」
「はーい、じゃ、そういう事にしとく」
剥いたリンゴを食べさせる。
真っ赤になりながら頬張るキミに私は傷口が治ってきてることに嬉しくて触れてしまう。
「だいぶ腫れも引いたね?」
「あ、でも瞼は2針縫ってて…」
「うん、でも傷跡は残らなさそうだね」
前髪に触れ傷口を見てる。
ふと目が合って、かなり近い事に気付いてはいたけどガラッと扉が開いてそっちに視線が向いた。
ベットの脇に腰掛けて彼の顔に触れている。
まるで今からキスでもするかのようなシチュエーション。
入って来たのは看護師さんと、その後ろに堤さん。
「秋吉さん、血圧測りますよ〜」
そそくさと退いて何事も無かった感じで振る舞ったけどちょっとマズかった。
やり過ぎた感は否めない。
少し反省していたら堤さんに腕を掴まれ、病室から連れ出された。
待合室らしきところまで引っ張られ、誰も居ないのを確認したら怒ってるような背中が振り向いた。