蜜と獄 〜甘く壊して〜
第5章 【絶頂地獄の成れの果て】
同じように聞いてくるお客様にも自ら一蹴していたというのに。
「僕、知ってるよ?リリカちゃんの本当の姿」
「夜は仮面つけてこんなお仕事する理由は何だい?お金じゃないでしょ?名家の血筋なんだから」
「僕の会社にも来て一筆書いてよ、ギャラは弾むからさ」
ピタッと手が止まってしまう。
ハッとして手コキを再開するもぎこちなかったかも知れない。
「書道家…なんでしょ?どこの家元?」
どんどんエスカレートしていくネットの掲示板。
誰かがタレコミしているのは間違いない。
「え、私ってそんなお嬢様に見えます?嬉しいな」
「普段は着物とか着てるの?先生…なんて呼ばれて筆握ってるんでしょ?その手で」
勝手に妄想を膨らませて興奮してるお客様は自らイってくれる。
「どんな私想像してイったの?」
「書道家とか……響きからしてエロいよね……リリカちゃん」
どうにか誤魔化して接客を続けたものの身内に敵が居る以上、下手に動けないし全てに関して疑いから入らなければならなかった。
一番信用していたトモチンも。
それが辛いのは堤さんも気付いてくれていたと思う。
それでも休めと言われなかったのは何よりも支え。
こんなくだらない事で尻尾を巻いてちゃならないの。
見せたかった景色はコレじゃないでしょ?
とにかく火のないところに煙は立たない…との事で暫く堤さんとも適度な距離を持つようにお互い気を付けた。
お店では皆と同様、相談するべきところはしてキャストとマネージャーの関係は崩さぬよう保つ。
勿論、家に来る事もやめて。
時々ふと考える。
あれほど絶倫だった人が大丈夫かな。
ちゃんと抜いてるかな。
1週間ほど禁欲して真夜中の電話。
よっぽど耐えきれなくなったらしい。
__はぁー、コレいつまで続くんだ?いっそのこと公表しちゃうか?
「んふふ、もう限界ですか?」
__何でお前だけ余裕ぶっこいでんだよ……ムカつくな。
「まさか……この電話、堤さんの声……どれだけ待ちわびたと思ってるんですか」
__はぁ………抱きてぇ。