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冬のニオイ

第1章 未送信BOX

【2008.3.31】

翔くん、最後に会ってからもうずいぶん経つね。
元気にしてますか?

出せないメールを書くのもこれで最後。
今日、アパートを完全に引き払って実家に戻りました。
明日からとーちゃんの工務店で働きます。

俺ね、あれからいろいろ考えました。
どうしてこういうことになったのかなぁ、って。

騙されたのはオイラが悪い。
翔くんが信じてくれなかったのも仕方ないと思ってます。

でもオイラが悪いんだけど、信じてもらえなかったのは本当にショックだったし辛かったよ。

まさかあのまま自然消滅になるとは思っていませんでした。

毎日連絡来るの待ってたんだよ?

ってオイラも自分からは連絡できなかったから同じだね。
ごめん、責めるつもりじゃないんだ。



俺さ、今回のことが無くても、いずれ自分は翔くんにふさわしくないって、身を引いてた気がする。

翔くんはオイラと一生共に生きていく、っていつも言ってくれたじゃん。
オイラもそれにはいつも同意してきた。
その気持ちは嘘じゃなかったよ。

でも、そもそも男同士なんだから、そんな簡単なことじゃないよね。
親に認めてもらうのだって大変だろうし、オイラ達が一生共に生きていくなら絶対いつかは壁にブチ当たってただろうなって思いました。

その時自分はどうしただろう、って想像してみたのね。
今のオイラのままなら、どの道無理だったよ、多分。
自分に自信がない、って結局俺自身の問題だもん。
自分で解決するしかないんだ。
自分で頑張るしかないんだなと思った。



俺、じーちゃんが生きてた頃から建築士の資格を取れって言われてたけど、試験が嫌でずっと逃げてたでしょ。
それに挑戦しようと思います。
何年かかるかわからないけど一級まで取る。

自信は行動からしか得られない、ってのがウチのじーちゃんの口癖だったけど、そこまで頑張れたら、きっとこんな俺でも自信がつくと思うんだ。
胸を張って翔くんの前に立てるんじゃないか、って。

本当に何年かかるかわからないけどね。
その頃には翔くんは結婚してるかもしれないけど。
合格したら会いに行きたいです。

会ってくれる?

でも会えなくてもいいんだ。
翔くんが幸せに生きててくれたら十分。
笑ってる顔を遠くから見れたらそれでいい。

俺、頑張るよ。

大好きな翔くん、元気でね。

じゃぁね。




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