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冬のニオイ

第5章 リフレイン

【潤side】

それから繋がって。
最後まで続けた行為は、何て言うかさ。
酔ってたせいなんだろうけど、相手に良く思われる為に媚を売るとか、演技してるとか、そういう感じが全くしなくてさ。

リラックスして、ただ感じまくってる大野さんが愛しくって、まるで長いこと付き合ってる恋人同士みたいだと思った。

「あっ、いきそっ!
前もっ、前も触ってっ!」

「いいよっ、ほらっ」

「あっ、あっ、あっ!」

「ほらっ、いっていいよっ!
俺の手に出しなっ」

「あっ、ああっ、あああっ!」

俺の手の中に零れ落ちた温かい体液を感じたら、我慢出来なくてこっちまで持って行かれた。

「さとしっ!
中に、ごめっ、んんんんっ!」

こんなに開放的な行為って、したことないかも。って、達しながら思ったんだ。
幸せだった。

なのに忘れてる、ってどうなんですか、大野さん?
酷いにも程があるでしょ。

俺は目の前でコーヒーを啜ってる可愛い人を見つめて、心の中で独りごちる。

「松本君、にやにやしてる。
何か、いやらしいこと考えてるでしょ?」

やっとコーヒーを飲みこんだ大野さんが、唇を尖らせて俺を咎めるみたいに言った。
アヒルみたいで可愛い。
もう、この人が何をしてても可愛いと思う。

好きだ。

とにかく好きだ。

俺はこの人に夢中なんだ。

「好きだなぁ、と思ってました」

「やめろよ……」

思ったまんまを言ったら顔を赤くして、視線をそらしてしまう。

「智」

「……仕事中は名前で呼ばない約束だろ?」

「ごめん。誰も居ないから呼びたくて」

「顔、デレてる」

ふふっ、自分だって真っ赤なくせに。

「大野さん、また抱きたい」

「っ、お前、誰か来たらっ」

慌てて周囲を見回してる。
出入口なら、俺がちゃんとチェックしてるよ。

「誰も来てませんよ。
車が入って来れば砂利の音でわかります」

ホッと息をついて俺を睨む。
その顔も可愛い。

「今日、仕事が終わったら連絡します。
週末だし、一緒にご飯行きましょう」

「オイラ、定時で上がるかもよ?」

あれから、二人きりの時は自分のことをオイラって言うようになった。
少しでも心を許してくれてるんだ、って思ってる。

あなたが好きだ。

あなたが欲しい。

智。
俺、あなたを必ず大切にするから。
どうか良い返事を聞かせて。


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