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三匹の悪魔と従者たち

第2章 悪は善し


三人の王子は洞窟の中の入り組んだ道──────人間界の建築でいうところの、廊下のような場所を並んで歩いていた。
それは王の間から放射状にいくつか伸びており、今彼らが向かっているそれぞれの自室へと繋がっている。


すれ違った掃除係の下女が壁際に寄って恭しく頭を下げ、ユーゴもつられてぺこりとお辞儀を返した。


母親譲りの端正な顔立ちの王子たちだが、その印象は三者三様だろう。

ゴウキの、短く刈り上げた髪と高い鼻梁は鋭くもあり、だが人懐っこそうなとび色の瞳は彼と接する者へその豊かな表情を伝える。


「あーあ。 あんのオッサンにゃ参るわ。 てか嫁て。合コンでもすりゃいいの? ユーゴ、ジン。 お前らなんか考えある?」


下女の胸の辺りをぼんやり眺めていたジンが、長男の愚痴交じりの声に我に返った。


知性という点では末息子のユーゴが一番とされている。
それに相応しい魔力を持ち、父親譲りの黒目のせいでこの中では幼さが垣間見えるものの、すらりと引き締まった体躯は貧弱さなどとは無縁であることも示している。


「僕、ネットで募集してみようかな。 今人間界なんかは不景気らしいよ。 働かなくてもいいとか一応200年位は寿命伸びるとか、相手側にもメリットはあるしね。 ジン兄さんは?」

「ユーゴ真面目か。 さっき言った通り、おれは興味ないね。 でもこの際、せっかく一ヶ月の自由時間貰えたんだ。 どっか魔界のホテルのスイート貸し切って久々のサバトかな」


深い二重に少しだけ垂れた目じりが甘い印象を持つ灰色の瞳。 次男のジンが美しさという点では三人の中で一段秀でている。
艶のあるテノールの声といい、先ほどの下女が彼の姿が小さくなるまでその背中を目で追っていたほどだ。



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