
小さな花
第3章 Saliva
「今度飲み行くわ。参観会(笑)」
またそうやって子供扱いするんだ。
本質が掴めないシンくんに、今日もモヤッとさせられて別れることになった。
…
言ったとおり、翌週の土曜日にシンくんはBLUEへやってきた。
「あれ?かわいいバーテンさんがいる」
おちょくるように言いながらカウンターに座り、ニヤニヤと私を見る。
「…。」
「なんだよ、その顔。ビールちょうだい」
青い照明の空間で見るシンくんは、なんだか新鮮だった。
飲めよ、という言葉に私も自分のビールを注ぎ、乾杯する。
「あら、シンちゃんじゃない」
出勤してきたタケちゃんが私の隣に立つ。
「お?タケお前ここで働いてたのか」
聞くと、タケちゃんもこの町に来た時アスクでアパートを探したから、シンくんのことを知ってるみたいだ。
2人は久しぶりに会うらしかったけれど、特に感動もなくタケちゃんは当たり前のようにビールを持ってきて参加した。
「いただきま~す」
「さすが図々しさは変わってないな」
しばらく3人で談笑していると、だんだんとお客さんが増えてきた。
タケちゃんがボックス席の接客へ行ってしまうと、また新たにお客さんだ。
煌びやかで、強い香水の香りを振りまく女性の2人組だった。
「いらっしゃいませ」
BLUEでバイトを始めてから、水商売の女の人もずいぶん見慣れた。
2人は慣れた様子でカウンターに座ろうとして、すぐに声をあげた。
「あーっ!有馬さんじゃん!♪」
ノリノリの彼女はよく見るとずいぶん若そうで、成人しているのかどうかさえ怪しい。
「有馬さん、真ん中ね~!」と盛り上がり、結局2人はシンくんを挟むように席についた。
ため息を必死にこらえながら、カウンターでの業務をこなす。
他の接客をしていても耳に届いてしまう、3人の会話。
「有馬さん、彼女にしてよぉ~」
「ちょっと子供すぎるな、キミたちじゃあ」
「え~?そんなことないよぉ?ほら、おっぱいも大きいよぉ?ふふっ」
「あっ!今チラ見したでしょお~!有馬さんのえっち~!あははは!」
シンくんは大人っぽい人が好きなんだよ。という私の優越感は、同時に自分をもへこませた。
