
小さな花
第9章 Rains and hardens
「なんであんなこと聞いた?」
「いや…特に意味はないよ。なんとなく」
「ふーん」
シンくんは煙草に火をつけ、ふぅーっと大きく煙を吐いた。
「どうして?」
「またあいつと会うのかなーって」
「…気になる?ふふ」
「馬鹿。お前はあぶなっかしいから、保護者としての心配だよ」
「え~?保護者なのにえっちするの?」
「うるさい」
「あはは」
…
終始楽しい雰囲気だった旅行も終わり、いつも通りの日常が戻ってくる。
シンくんとの関係はハッキリしないまま…――。
休み明け、かどやに出勤すると加奈子ちゃんから「お土産です♪」とお饅頭を渡された。
「わあ、ありがとう。どこに行ったの?」
「名古屋に行ってきました!」
「いいね。もしかして彼氏と?」
きっと違うだろうな…と思っていた私は、彼女の返事を聞いて驚いた。
「実は…篠原さんと…」
「えぇっ?!」
聞くと、カズヤくんに誘われて名古屋で二人で年越しをしたと言う。
脳みそが勢いよく回転し、状況を理解しようと急いでいた。
「とくに予定もなかったんで。えへへ…」
「まさか、そんな事になっていたとは。付き合ってるの?」
「いえ、そういうのは無くて…。でも、楽しかったです♪」
「そっかぁ、それは良かった…」
もちろん嫉妬なんて少しも無いけれど、ただただ加奈子ちゃんが心配になった。
でも、彼には気を付けなよ…なんて言ったら偉そうに聞こえるだろう。
言葉を探していると加奈子ちゃんが口をひらいた。
「せいらさんは、年越しどうでしたか?有馬さんと…お出かけしたんですよね?」
お正月のかどやでのシンくんとの会話で、やっぱりバレていたんだ。
「あっ、うん…山梨のコテージにね」
「え~いいなぁ!」
加奈子ちゃんが目をキラキラ輝かせた時、お客さんがやってきた。
はっきりしていない関係を、根掘り葉掘り話す必要がなくなってホッとした。
