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妄りな昼下がり(仮)

第2章 雪 30

風呂に入って一日の汚れを落とし、黒髪にオイルを塗り整えたら乱視用の眼鏡をつけて寝室に向かう。

マットレスの上で成がスマホを見ている。雪はそっと成の隣に行きくっつく。

「なぁ、成。」

「何?」

成の放つ言葉は不機嫌な色を潜めている、今は喋りかけられたくないのだろう。そもそも成は口下手で余りお喋りではない。
それでも雪は聞いた。

「私のどこが好きで、一緒におってくれるん?」

成は相変わらず不貞腐れた様子で

「全部、全部っ」

と早く話しを切り上げたいように言う。

「全部じゃ分からん。具体的にどこ?」

成は一瞬考えて

「顔、かな?あとは料理上手なとこ、おっとりしとるとこ」

無理矢理聞いたので、成はもう喋りかけるなよ?という空気を漂わす。
どうしてそんな事が無性に聞きたくなったんだろう?自己肯定感でもあげたかった?
成が部屋の電気を消す。辺りは暗闇になった。豆電球もつけず、雪の目蓋も閉じていき暗闇の中に入っていった。

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