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妄りな昼下がり(仮)

第3章 達也 時々 成

成がドアを閉めるのを確認して、雪も化粧を始める。家で一番大きい鏡をキッチンテーブルに置き、鏡を覗き込む。すっぴんの顔はあまり好きでは無い、ほうれい線が深くなってきた気がして雪はため息をつく。
一通り化粧を施したら、最後にニンマリと微笑んでみる。何故か笑ってるのに泣いているような困り眉になる、成と一緒だ。何故、成はいつも笑ってるのに泣いたような顔をするのだろう?
雪は常に疑問だった。そして雪も成と過ごして五年で染み付いてしまったのだ。
これは仕方のない事なんだろうか、これから達也と会うのに、成の事を考えてしまう雪は右頰を叩き着替えた。光沢のあるチェックのブラウスに、茶色のジャケット、合皮のミニスカートを履く、靴はローファー、色気は無いなぁと思ったが全てがタイトなので身体のラインは分かる。
あとは待ち合わせのF駅に向かうだけだ、家の近くは流石に誰が見ているか分からないから今日もF駅で待ち合わせする事になっている。玄関を開けて肌寒さを感じたら、空を見上げるドンヨリと淀んだ空は今にも泣きだしそうだった。

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