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🌹密会🌹

第12章 🌹March🌹(終章)-3




「死ぬ程、その指輪が欲しかったのか?」


しんと静まり返った室内にポツリと彼の声が響く。
それは湖に広がる波紋のようだった。


「欲しかった。欲しくてたまらなかった。貴方が...貴方が私との子供を喉から手が出る程欲しがったように、私も欲しかったの。ずっと...ずっと言えなかっただけ。」



一言一言を噛み締めるように口に出す美月は、彼の目を見据えた。



「まだ何も終わってなんかないの。私から目を背けないで。ちゃんと真っ直ぐ見て。貴方が好きだって、下手な告白しか出来ない私の声を..最後まで聞いて。」



少しでも彼の心に響けばいい。
拙い言葉でそう言い切ると、美月は彼からの言葉を待った。
すると伏せられていた彼の双眼がゆっくり美月に向けらていく。
眉間に皺を寄せ、唇を噛み締めた彼の苦しい表情が露わになる。


その表情を取り繕う余裕もないのだろう。
彼はリングケースをしっかり抱えたままの美月の元へ足早に近づくと、彼女の骨が軋むほど抱きしめる。

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