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副業は魔法少女ッ!

第7章 私だけが独りだった

 
 世界は、目を開けていられないほど眩しかった。

 物心ついて最初に認識した人間、つまりなずなの両親は、無論一人前の大人だったし、少し歳上の従姉妹達や幼稚園の子供達、近所で顔を合わせる人々は、広かれ狭かれ、そつなく社会生活を営んでいた。決まった時間に寝て起きて、身嗜みやその日の持ち物チェックも抜かりなく、大人であれば仕事や家事、未成年なら学業や習い事という義務をこなす。

 なずなの両親や保育士曰く、それは当たり前のことらしかった。

 当たり前のことが困難なのは、夜は寝つけず朝は寝床を離れられない、初対面の人間と話せば極度に口数の減る、言いつけもうっかり忘れる、なずなだけのようだった。


 望んだ覚えもないのに産み落とされた。自分は、完璧に機能している世界に順応出来ない異物だ。過失にシビアなこの世界についていけない。


 甚だしい劣等感が、五つにも満たない子供の内から、なずなを閉じ込めていた。



 憎しみという激情を知ったのは、十四歳の夏前だ。

 それまで耐えていた心の糸が、切れたのかも知れない。

 勝手に産んで一方的に期待して、勝手になずなに失望した両親や、明るい好意を囁きながら、どこかなずなを見下した態度のすぐる、数合わせに仲間に入れてくれているのがあからさまな友人達や、なずなには一生手の届かないものを全て持っていた菫子。…………

 彼らに向いていたのだろう負の感情の矛先は、その日、偶然そこにいたすぐるに向かった。

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