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副業は魔法少女ッ!

第8章 正義の味方のいないご時世


 元いた世界に四人の魔力を向けてすぐ、ルシナメローゼが一変した。

 蒸せるような負の匂いやくすんだ空、澱んだ空気が、黒い怨嗟に変化した。初めからそこにあったものが、可視化されたようだった。
 彼らは、自身の存続をおびやかす敵に牙を向けた。死に物狂いの闇の成れの果て達は、かつての同胞達に憑こうとした。
 増幅した怨嗟達を打ち砕いたのは、ゆいかの魔法だ。心当たりのない力が常に味方についていたのは、やはり菫子の影響だろう。広範囲の攻撃に長けた明珠やなずなに劣らず、いや、おそらく彼女らより手ごたえを感じず、空気を操る感覚で、ゆいかは怨嗟達を抹消した。

 現実世界の浄化は、まるで祈りのようだった。魔力を手放すための魔法は、心地好さが身体中を満たした。些細な悩みもほどけていくようだった。


 そうして、ついにルシナメローゼは消えた。

 白昼夢のように曖昧な場所に意識を迷い込ませたゆいか達は、気が付くと、椿紗の自宅の庭にいた。通りすがりの近隣住民達が、やたら視線を向けてきたのは、とりたてて何もない庭に、何十という人数が集っていたからだろう。元々面識のなかった顔触れは、狭苦しさに遠慮してか、すぐ帰った。ただし、彼女らを含めて数人は連絡先の交換をしたり、連れ立ったりして、帰路についた。

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