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ほしとたいようの診察室

第8章 入院生活は続く

……


外来で診察をしている合間に、PHSに連絡が入った。吹田先生からだったので、なんとなくのんちゃん絡みだろうと出る。



「ごめん、忙しいところ。そっちにのんちゃん行ってない?」



開口一番、早口でそう言われて、おや?と思う。




「来てないよ」





嫌な予感は足元から忍び寄り、胸元で胸騒ぎと化す。ざわざわと鳴り響く耳鳴りのような音に紛れて、吹田先生が言う。







「いなくなった、病室から」








「……え?」









聞き間違いであることを願う。






「病室も病棟も、どこを探してもいない。スマホも持たずにどこか行ったみたいで。病室のベッドに病衣が脱ぎ捨てられてあったから。……着替えてどこかいったんだと思う」






聞き間違いではない。


のんちゃんが、無断離院である。




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