ほしとたいようの診察室
第9章 ひとときの外出
2人きりになった空間が、のんびりとスーパーを目指して動き始める。
「なに作るの?」
前を見据えたまま、陽太先生がわたしに尋ねる。そんな光景も初めてなことに気づいて、なんだかようやく弾むような気持ちが追いついてきた。
いつものように、頬が緩む。
「ふふ、秘密です。陽太先生、いっぱい食べてくださいね」
「お安い御用」
それからは、いつもの調子が戻ってきた。
いつものように、言葉を交わす。でも、いつもと違うのは陽太先生が前を向いて、ハンドルを握っていること。
密室。2人きり。
たまにそんなことを考えて、わざとドキドキしてみる。
まだ始まったばかりの今日が終わるのが、すでに惜しい気持ちがある。
車は颯爽と街中を通り、やがて目的のスーパーへとたどり着いた。
……
作品トップ
目次
作者トップ
レビューを見る
ファンになる
本棚へ入れる
拍手する
友達に教える