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シャイニーストッキング

第9章 絡まるストッキング8        部長佐々木ゆかり

 32 彼女の目

 確かにこの伊藤敦子さんは、越前屋さんとは真逆的な、女性としての魅力に溢れている…

 だからといって、わたしがこんな
 嫉妬…
 警戒…
 といえる様な感情を持つなんて…

 あり得ない…

 わたしはそこまで彼を、あの人のことを、心底愛してしまった…
 と、いうことなのだろうか。

 ああ…

 ああ、あの人に…

 浩一さんに…

 大原本部長に早く逢いたい…

 そして、心からそう想ってしまっていたのである。


「あれ、ゆかり室長どうかしましたかぁ?」
 すると越前屋さんから鋭いツッコミの言葉が入ってきた。
 
「あ、え、うん、い、いや、別に…」
 そんなわたしの心の動揺、いや、揺れ動きを越前屋さんは敏感に察知したのか、そう声を掛けてきたのだ。
 そしてわたしは慌てて返事をする。

「ううん、いや越前屋さんは相変わらずに面白いなぁっ、てね…」
 わたしは悟られまいと、必死に誤魔化した。

「えー、そうですかぁ…
 まぁ、でもぉこのことはナイショでお願いしますよぉ…」
 変わらずハイテンションでそう言ってくる。

「うん、わかったわ…」

 なんとかうまく誤魔化せたと、思ったのだが…

 伊藤さんがそんなわたしをジッと見つめていたのに、気づいたのである。

 あっ…

 そして一瞬なのだが、そんなわたしの心の想いを、あの彼女特有の美しい透明感のある目に見抜かれた…
 かの様に、感じてしまい、再びザワザワと騒めいてきたのだ。

 だがそんな伊藤さんは、わたしと一瞬目合ったのだがすぐに彼女は目を逸らし
「わたしも面談楽しみだわぁ…」
 と、言ってきたのであった。

 どうやらわたしの考え過ぎだったようである…


「えー、あっちん、ダメだからねぇ」

「うーん、どおしよっかなぁ…」
 越前屋さんと伊藤さんの二人はそんな戯れ的にふざけ合う。

 あの一瞬の伊藤さんのあの目はなんだったのだろうか?…

 気のせいなのだろうが、なんとなく彼女に心の内なる想いを見透かされてしまったような感じになって、気になってしまっていた。

 思い過ごしかな…

 だが、まだ少し、ザワザワ感は続いていたのだ。


 


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