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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 54 絶対的存在

 彼女、蒼井さんにとってはわたし達にとって山崎専務が絶対的存在なように、大原本部長の存在は絶対的なのである。
 本部長の言葉には説得力が彼女に対してはあるのだ。

 わたしはあまりにも彼に近くなり過ぎてしまっていたのだ…

「とりあえずコールセンター部の主任をお願いしたいんだが…」

「は、はい…」
 彼の言葉は蒼井さんに対しては重みがある。

「わ、わかりました…」

「それに…
 もう少し時間が経ったら、新たに宣伝広報部を設けるから…」
 蒼井さんをじっと見る。

「今度は広報部もお願いしたいんだ…」
 これはわたしも初耳だった。
 そして彼は今度はわたしと蒼井さんの二人を見てくる。

「その時はキミ達二人で広報部をお願いしたいんだ…」

「えっ」

「えっ…」
 これにはわたしと蒼井さん二人同時に反応してしまう。

「うん、そう、二つの太陽でな…」
 と、そう云って彼は、大原本部長は離れていった。

「二つの太陽って…」 
 わたしと蒼井さんはほぼ同時にそう呟き、顔を見合わせる。

 二つの太陽って、笠原主任の言葉だわ…

 多分、その時、蒼井さんも同じ事を思い浮かべているように感じられたのだ。
 思わぬタイムリーな、彼の助け舟の言葉だった。

 さすが本部長は伊達ではない…

「そういう事みたい…」

「えっ、そういう事みたいって…」

「うん、実は…」
 わたしはこの新規事業プロジェクトのメンバーの配置構成には関わっていない等の話しを彼女にしたのである。

「基本的には大原本部長と山崎専務が決めたらしいの…」
 わたしも咄嗟に本部長の言葉に合わせたのだ。
 それはこの場をうまく収める為の方便であった、つまりわたしも彼を、本部長を見習ったのである。

「そうなんですか…」

「うん、そうなの…」
 そうなのである、まだ、わたし達、彼、本部長とわたしはまだ、山崎専務の傀儡でしかないのだ。
 それはこの目の前にいる蒼井さんの主任配置という事実で痛い程に痛感したのである。

 だが、傀儡も今だけだ…
 なぜかわたしはこの時、そう強く思ったの
である。
 なんとなくさっきの本部長の咄嗟の機転と、この目の前にいる蒼井さんの姿を見てそう思ったのだ。

 彼と、この蒼井さんがいれば…

 この時、なんとかなるように感じたのである。




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