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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 66 誰の…

「秘書に作らせたのだが、どこかのマニュアルの完全コピーでリアリティがないんだよ…」
 軽く目を通していく。

「おおっこれはいい、よく内容を掴んでいる、これはありがたい…」
 このM&A的な吸収合併は完全に山崎専務が仕掛けた仕事なのである、だから明日は山崎専務の手柄のアピールの意味もあり、基本は山崎専務がほぼ独壇で会見をする予定にしてあるのだ。
 そして私はあくまでもオブザーバー的にいるだけの予定なのである。

「これは佐々木ゆかり部長が気を利かせてくれて、作成したんです」
「おおそうか、彼女が、さすがだ」
「はい…」
「ちゃんと礼を云っておいてくれ…」
「わかりました」
 山崎専務の機嫌は一気に高まった。

「あ、そうだ、どうだ、あの人事は…」
 新規事業の人事配置構成のことを訊いてきたのだ。

 そうだ、機嫌もよいことだし、なんとかうまく訊きだしてみようか…
 あの筒抜けが不気味なのである、せめてヒントでも訊き出したかった。

「あの配置構成は正に適材適所の素晴らしい人事配置ですね」
「おお、そうか…」
「はい、あれならば彼女、いや、佐々木ゆかりも室長として遠慮なく仕事できますよ」

「うん、そうだろう…」
 それを一番気を付けて考慮したからなぁ…

「でもですね…」
 意味あり気に溜めて、山崎専務の目を見る。

「ああ、アレか…」
「は、はい…」
「あのコールセンター部の主任にした彼女のことだな…」
 山崎専務は私の目の意味を察知したようである。

「はい…」
「問題あるのか…」
「いえ、問題は…ない…ですが…」
「なるほどな、で、誰の情報か…ということかな…」
「あ、はい…」
 私は頷く。

「私に手の内を見せろ…と」
「あ、いや…」
 すると山崎専務は腕を組み、少し考える。

「まあ、いいか…」
「……………」
「大原くんだけはいいか…」
 私の目を見つめてきた。 
 その目はいつもより厳しい、鋭い眼差しであった。

 そしてその山崎専務の目が
 まさか、裏切りはしないだろう…
 そう云ってきているようであったのだ。

 ゴクリ…

 私は思わず唾を飲み込み、目を見つめ返す、山崎専務の新たな迫力に少し呑まれてしまった。

「ま、いいか、大原くんならな…」 
 そして、ふと、苦笑いをしたがら話しをしてきたのである。

 それは…




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