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シャイニーストッキング

第4章 絡まるストッキング3 大原本部長と佐々木ゆかり部長

 71 憧憬の目

 あの『鉄の女』が、わたしの昔の話しで涙をこぼしてくれている…
 それは予想もしなかった。

 そういえば彼女、ゆかりさんは前よりかなり丸くなった、いや、尖っていたカドが取れた感じがするわ…

 そうか…

 彼、大原本部長に愛されているってことなのか…
 涙で赤くなった彼女の目を見てそう思う。

 彼に…

 大原浩一に…
 
 かなり大切に愛されているようだ…
 少しだけ、嫉妬を感じていた。

 だが、このゆかりさんの涙を見ると

 ああ、彼を、大原本部長を奪わなくてよかった…
 
 奪らなくてよかった…

 そうも思えていたのである。


「ま、『黒い女』の物語はこんな感じで
す…」
 そしてわたしは話しの流れを切り替えようと、少し明るくそう云ったのだ。

「あ、話してくれて、ありがとうございます…」
 ゆかりさんはそう呟きながら鼻をかむ。

 さあ、今度はわたしの番だ…

 わたしにも訊きたいことがあるのだ…

「そう、わたし、ゆかりさんに訊きたいことが前からあったの…」

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…

 再び、やや、自律神経が昂ぶってきた。

「えっ、な、なんですか」
 ゆかりさんは少し動揺をしてくる。

「うーん、ええとねぇ…」

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…

 どうしよう…

 訊いていいよね…

 訊いても大丈夫よね…

 せっかくいい雰囲気になっているのに、これを訊いて台無しにはならないよね…

 わたしは少し迷いながら、ゆかりさんの目を見つめる。
 すると、ゆかりさんは動揺をしたかのような表情になり、あの目、そうあの目

 憧憬の目…
 を、してきたのである。

 ああ、あの目だ…

 そうあの目、憧憬の目だ…

 ドキ、ドキ、ドキ、ドキ…

「ええとねぇ、そう、その目よ…
 そう、ゆかりさんのその目のこと…」
 その目のことが訊きたいの…
 わたしはそう呟いた。

「えっ、こ、この目の…」
 そしてゆかりさんは動揺の色を隠せない、恐らく、自分自身でも思い当たることがあるのであろう。

 この憧憬の目の自覚があるのだろう…
 と、そう思われたのだ。

 あの『黒い女』時代に、よくこの目で、憧憬の目をしてわたしを見てきていたのである。

 わたしは、今夜、二人でこうして飲む事になった時、必ず訊こうと思っていたのだ…






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