テキストサイズ

シャイニーストッキング

第6章 絡まるストッキング5 和哉と健太

 29 熱帯夜の生暖かい空気

『綺麗に片付けしてね…』
 どうやら健太にはわたしのその言葉が心に引っ掛かかったようなのである。
 ふと、宙を見つめ、何かを考えている様子の表情を浮かべてきたのだ。

 なんか、かわいいわ…
 その健太の表情が、様子が、あまりにもバカ正直さを表してきていて、わたしには可愛いく感じてしまったのである。

 好き…なのかもしれない…

 いや、好きになった…かもしれなかった。
 そして心に、衝動が湧いてきたのである。

 抱かれたい、愛し合いたい…

 この衝動は、例の自律神経の激しい暴走の欲情の想いではなくて、まるで20代前半くらいまでのあの純情で、純粋だった頃のあの淡い、恋心…

 好きな男に抱かれたい…
 そんな穏やかな、温かい、昂ぶりであったのだ。

 だが、その想いを言葉ではとても恥ずかしくて云えなかったのである。
 だから、そこは大人の女のズルさで、テーブルの下で健太の足元をヒールで突き、想いの合図を伝えた。


「出ますか…」
 すると健太には、こんなわたしの想いが伝わったようであった。
 すかさずそう言ってきたのだ。
 わたしはその言葉に黙って頷く。

 やはり、一度愛し合ったから、こんなわたしの想いもすんなり伝わったのだ…


 そしてわたし達はビストロの外へ出る。

 冷房の効いていた店内から外に出ると、真夏の夜の蒸し暑い空気がわたし達を包んできた。
 だが、その熱帯夜の生暖かい空気がわたしの心を刺激してきたみたいだったのだ。
 わたしは外に出た途端に、いきなり健太の腕に自らの腕を絡め、そしてカラダを寄せていく。

 この想いを、健太に伝えよう…


「健太さん…抱いてくれる…」
 そう、わたしは囁いた。

「あ、は、はい…」
 すると健太は即答で頷いてくる。

「でもね、今は、この前みたいな暴走じゃないのよ…」
 わたしは続けてそう囁く。
 決して言い訳ではなく、素直な想いを伝えたかったのだ。


「は、はい…」

「わたしね、今ね、純粋に、健太さんに抱かれたいの…そう想っているのよ…」
 わたしは素直に、正直に、今の想いを、心境を、囁いたのである。

 ザワザワ…







ストーリーメニュー

TOPTOPへ