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　54　太陽と月

　「同じ匂いって…」
　「うーん、何ていうか…」

　笠原主任曰く
　云うならば、佐々木ゆかり課長は光り輝く太陽で、『黒い女』であった蒼井美冴は月、それも蒼々と夜空を輝き、照らす、満月なのだ…
　と、感じるのだと言ってきた。

　ただ、単純な明と暗ではなくて、互いに持っている能力を表に出しているのがゆかり課長であり、隠しているのが蒼井美冴であるのだ…と。
　だから太陽と月のような関係であるように感じるのだが、蒼井美冴が隠している能力を表に出したら一気に太陽のように明るく輝き出し、ゆかり課長と蒼井美冴という二つの太陽が莫大なエネルギーを発するのではないのか…
　と、笠原主任がそう言ってきたのである。

「そ、そうですか…」
　わたしはその笠原主任の言葉に驚いた、そしてそこまで彼女を見て、観察していたのか、とも感嘆してしまっていたのだ。

「そしてなんか、今朝彼女の目を見て、あの目の輝きを見て…」
　彼女は、覚醒、したのではないのか、と、強く実感したのだ…
　と、言ってきたのである。

「ま、まあ、どっちみち今日面談しますから…」
「そうなんですよっ…」
　もし、もしも彼女のヤル気を感じたらどうするつもりなんですか…
　と、笠原主任は熱く語ってくるのだ。

「えっ、いや、まだ、何も…」
　そう何も考えてはいなかった、それよりも今朝の彼女とのやり取りで、以前よりも増してプレッシャーを感じており、実は非常に憂鬱な問題として捉えていたのである。
　それにこうして笠原主任に言われるまで、どうせ断るだろう、とも安易に考えていたのだ。

「どうしましょう…あっ」
　閃いた。

「じゃあ、今回の面談は笠原主任が中心で話して、そして導いてくれませんか…」

　実はわたし、何となく彼女が苦手で…
　と、とうとう本音を漏らしてしまうのである。

「何となく分かってましたよ…」
　すると笠原主任はそう言ってきたのだ。

「えっ、そうなんですか…」
「はい、でも、それもお二人が似ているという事なんじゃないのかな…」
　じゃあ、今回は彼女の面談はわたしが仕切りますよ…
　と、ありがたい言葉を頂いたのである。
　これでプレッシャーの一つがなくなった。

「じゃあ、夕方４時位で…」
「はい、よろしくお願いします」

　そしてわたしと笠原主任は会社に戻ったのだ。