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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 30 あだ名…

「いらっしゃい、おおっ、コッペ、帰ったのか」
 店の玄関に入ると靴を抜ぎ、下駄箱のあるスペースがあり、そこでオーナーである小学校時代からの幼馴染みである『宮本正史…まさやん』が出迎えてくれた。

 コッペ…
 私の名前は大原浩一、こういちである。
 その当時の給食の主食はコッペパンである、そしてそのコッペパンからこういちの『こ』から付いたあだ名がこの
『コッペ』であるのだ。
 そして小学校時代からの幼馴染みは皆私を『コッペ』と呼び、中学校時代からの友人には『こうちゃん』と呼ばれていた。
 そして私はオーナーである
『まさやん』にカウンターを勧められて座る。
 店はかなり繁盛していた。
 カウンター席は8席あり、基本、このカウンター席にはオーナーであるまさやんの知人や関係者等しか案内はしない。
 普通の一般のお客は4人掛けの15席程の広いフロアのテーブル席へと案内される。
 その他に別フロアがあり、そこはお座敷の部屋となっていて、大小宴会が出来る個人店としては大きな店なのだ。
 そしてお盆休みという事もあり、店内はほぼ満席であった。
 いわゆる繁盛店なのである。

「なかなか繁盛してんな」
「いやぁ、そうでもないよ」
 と、謙遜しているが、祝辞や法事等の宴席も需要があり、繁盛していた、そして当然、私の親父の10周忌の法事の席も依頼してあった。

「あっ、そうだ、ニューステレビ見たぞ」
「あ、あれか…」
「なかなか出世してるじゃないか」
「あ、うん、まあまあだよ」
 一昨日の吸収合併の記者会見を見たらしい。
 そしてしばらく談笑を続けていると、
「あっ、そうだコッペ、本田きよみ先輩はもちろん覚えているよなぁ」
 と、まさやんは突然言ってきた。

「本田きよみ先輩…あ、うん、覚えてるよ」

 本田きよみ先輩…
 それは忘れたくても忘れられない存在である。

 初恋の人であり、初めて付きあった女であり、私の青春の甘さの原点であり、そして象徴でもある存在といえる…

「今、いるんだよ…」

「えっ、ここに…」

 急に胸が、心が、ザワザワと昂ぶり、騒めいてきていた…

 そして甘酸っぱい青春の匂いも漂ってきた…






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