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シャイニーストッキング

第8章 絡まるストッキング7      本部長大原浩一

 178 着信

 ノンとは20年振りに突然、偶然に再会し、たまたまこうして飲んでいるだけなのに…

 嫉妬心なんておかしいじゃないか…

 だがこの騒めきは内容こそ違えども、健太に対して自覚したあの嫉妬心と同じ類いの騒めきなのである。

 ノンへの独占欲なのか?…

 そんな馬鹿な…

 だが確実に心がザワザワと騒めいているのだ。
 そんな事があるのか。

 この20年間、全くといっていい程にノンの事、存在そのものを忘れていたんだ…

 それが嫉妬を感じるなんて…

 それは今夜のノンが余りにも美しく、艶気に溢れた魅力を醸し出してきているせいだからなのか?…

 それは、余りにも…

 ただの助平な、中年オヤジ丸出しじゃないか…

 だが、この騒めきは間違いなくノンに掛かってきた電話に対しての…

 そして電話を掛けてきているであろう、全くの見ず知らずの、いや、存在ですら不確かな相手に対しての嫉妬心からの想いなのである…

 なんなんだ、あり得ない…
 私はその騒めきに不惑な想いの動揺をしてしまっていた。

 ノンが余りにもいい女になった、いや、なっているせいだからなのか…

 つい、今さっき、ノンに責められたかの様なあの20年前の事等をすっかり棚に上げて、そんな事をさえ忘れていたくせに…
 余りの自分の調子の良さに自虐の思いがふつふつと湧き起こってくる。

 ダメだ…

 最低じゃないか…

 これじゃ、本当に見境のないオス犬と同じじゃないか…


 ブー、ブー、ブー、ブー…
 すると、私の携帯電話も着信したのだ。

 あっ…

 それはさっき予想していた律子からであった…

 律子も銀座のクラブがお盆休みに入り、狙っていた私が突然の副社長から誘われたゴルフとその最終日の母親の突然の入院により、本来の予定よりも三日程早くなった帰省のせいでおそらく悶々と暇を持て余している様なのである。

 ブー、ブー、ブー…
 私はそんな律子からの着信をしている携帯電話を見つめ、ふと考えていた。

 私の突然のこんなお盆休みの流れで暇になっているのはわかるのだが…
 律子はまだ28歳と若いのである。

 私なんかじゃなくて、他に友達等がいても、いや、遊んでもいいんじゃないのか…

 それとも、そんな友達等はいないのだろうか…
 そんな事が一瞬思い浮かんだのであった。



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