甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
「あれ、つーちゃんお手洗い終わった?」
DAiKIさんが迎えに来たので即座に頭を下げジロウは行ってしまう。
「どうしたの?こんなところで」
「あ、いや……仕事の話してました」
「ふーん、あぁ、そう」
再び手を取られ甲にキスしてくる。
嗜む程度にお酒飲まれてたけど酔ってるフリなのか。
グイと引かれデッキの方へ。
少し死角になる端で2人きりに。
「ほら、やっぱり目を離すと浮気する」
「え、あの、彼はマネージャーで…」
「わかってる、わかってるけど男でしょ?好きな女が何とも思ってない相手でも知らないところで2人きりで居られると良い気分しないな」
「あ………ごめんなさい」
「うん、宜しい」
そこまで言うと前を向いたままグッと肩を抱いてきた。
夜の海は波が静かで心地良い風を運んでくる。
潮の匂いが2人を包み、まるで昼間に撮ったMVのアンサーソングでも出来そうな雰囲気。
着ていた革ジャンを私に羽織らせて
「戻ろうか」と言われてホッとした。
まさかまさかのホテルに帰るまで気が抜けないとは。
ずっと恋人役しとかなきゃダメなんだろうな。
その後少しだけスタッフさん達とワイワイご飯を食べて、21時過ぎにはホテルへ戻るとのことで解散となった。
羽織らせてもらっていた革ジャンを返すと皆の前で前髪にキスされ「車まで送るよ」と甘やかされる。
ジロウと吉原さんの前で肩や腰に手を回され一緒に歩く。
最後は「帰したくないよ~」ってハグまでされて。
「また明日、良い撮影にしましょうね」
そう言うとやっぱり頬にキスされた。
見られてたらどうするんですか。
絡めた指先もなかなか離してくれなくて。
先に乗り込んでいた吉原さんに
「つーちゃんだけ置いてってはダメ?」と覗いて聞いちゃう。
運転席にはジロウが居るけどどんな顔をしているのかは見えない。
「この子がキャストじゃなければどうぞどうぞ〜て感じだけど、ごめんなさいねぇ、気に入ってくれてるのは有り難いけど私もちゃんと管理しなきゃならない立場なの、そういうのはプライベートで付き合えた子にしてあげて」とウィンクして断ってくれると仕方なく手を離してくれた。