甘い蜜は今日もどこかで
第5章 【もし間に合うのなら】
一通り撮影は終了した。
時間通りだし一応、順調なのかな。
2日目も食事会では常にDAiKIさんの隣をキープしてる。
私もノンアルコールにしてもらった。
明日は大事なジャケット写真の撮影なので。
和気あいあいとした食事の席も終盤に差し掛かるとジロウがソワソワしていて、急いで帰らせようと試みてくるのが可笑しかった。
「明日に備えてもう帰りましょう、車回して来ます」
「ハハハ、何もあんなに急がなくても良いのにね〜せっかち〜」と吉原さんも呆れてる。
「つーちゃん帰るの!?早いよ〜」ってDAiKIさんが来ると車から降りてきたジロウが慌ててやって来る。
「椿さん!用意出来ました、どうぞ」
後部座席のドアを開けて待ってるから
「DAiKIさん、お疲れ様でした、また明日宜しくお願いします」って頭を下げたら案の定ハグされて「おやすみ」と髪にキスされた。
「明日も俺を虜にしてね」
「は、はい」
シラフだとリアクションに困るセリフもサラッと言ってのけちゃう。
たくさんそうやって逆に手玉に取って来たのでしょうね。
頬を親指でなぞられるのは何の意図…?
これ以上の関係にはなれないのに。
「かーわい、つーちゃん、おやすみ」
「うん、ダイちゃん、おやすみ」
渾身の笑みでバイバイして乗り込んだらすぐに出発した。
ホテルに着いてそれぞれの部屋に戻る。
「おつかれ〜」と吉原さんも最上階へ行った。
先に降りたはずのジロウが私の降りる階にまでダッシュで来てたのは予想外だったけど。
「どうしたの?そんな走ると酔いが回るよ?」
「ハァハァ……酔ってないです」
カードキーで部屋のドアを開ける。
入って来ようとするから。
「な〜に?マネージャーがこんなことしたらダメなんだよ?」
「わ、わかってます……疲れてるんじゃないかと思って……マッサージします」
もっとマシな理由考えて来いよ。
そこがジロウなんだけど。
クスッと笑うと余計アタフタしてる。
「そっかそっか、酔ってるなら仕方ないね」
「え、違っ…」
「介抱させてくれるならこの部屋入って良いよ」
「あ、はい…」