甘い蜜は今日もどこかで
第8章 【ずっといつまでも】
都合の良い時だけ慰めてもらって、仕事で恩返ししようと思っていたけどそれは自己満足だったかな。
もう、弱いところ見せちゃいけないんだって力んでた。
とんだ勘違いだったのかも。
「支えますよ、これからも……私は私の仕事を全うするだけです、副社長の秘書なんて私以外務まらないでしょ?いや、私が譲りませんけど……ふふふ」
「あぁ、宜しく頼むよ、ありがとう」
イメチェンが功を奏したのか大正解だったみたいで行く先々で人気を博し、契約をいくつも成功させた。
「ごめんな、忙しくさせちゃって」
「何言ってるんですか、喜ばしいことですよ、まぁ、でももう少し忙しくても全然私には捌けますけどね」って嫌味も入れつつ良好な関係を築けている。
定時できっちり上がれるように仕事を回してくれるし、皮膚移植の日は外回りの仕事と称して「直帰しろ」と早めに向かわせてくれた。
何度も頭を下げて感謝する。
手術が決まって少ししたらジロウが丸坊主になってたことにビックリした。
やっぱり手術の妨げになるらしいからバッサリ切ったんだって。
意外と似合ってて可愛かったよ。
全身麻酔だから終わった後もすぐには目を覚まさないし、話すことも難しいだろうけど会いたいな。
「よく頑張ったね、えらいね」って言いたいな。
やっと包帯が取れた手をずっと握っていたいな。
少しでも肩や背中の痛みが取れる事を祈って。
午前中に行われた皮膚移植手術。
私が行けたのは夕方になってからだった。
病室に行くと、酸素マスクをつけて眠るジロウの姿が目に入る。
ようやく麻酔も切れてきて薄っすら目が開いた。
お母様、お姉さん、私に囲まれて目覚めたジロウの第一声が「いたい…」だった。
変わってあげれないのが歯痒いね。
その痛みも少しずつ取れていくらしいからそれまで耐えてね。
薬のせいで気分が悪いのも可哀想だった。
吐いて、治って、また吐いて…の繰り返し。
お姉さんが言っていたけど、これからのリハビリが辛いだろうとのこと。
皮膚がくっつくまで固定しているから関節が固まって伸ばす時が辛いんだって。
ジロウ、乗り越えられるかな?
基本、ヘタレだからたくさん泣きそう。