甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】
「どうやったらキミは手に入る?」
「どうやっても無理です」
「指輪がないからダメなのか?今すぐ買ってこよう」
「ちょいちょい!座って?」
「あ…………ハイ」
色々話がぶっ飛び過ぎている。
瞬時に判断した結果。
「今度、女性との距離感の持ち方をお教えしますね?そんなんじゃ、大切な人が出来た時には逃しちゃいますよ?焦りは禁物です、みっともないです」
「そ、そうなのか?藤堂さんがドキッとするような男の行動や言動を教えてくれ」
何か、趣旨違ってね?
まぁ、いいや。
秘書業務に追加しておこう。
ちょっと面倒くさいけど着眼点を変えるには致し方ない。
「もう今日は解散で良いですか?明日もあるので」
「送るよ」
「いえ、結構です、迎えが来てるので」
「えっ!?」
「送迎付きなの知ってますよね?」
「またあの男か」
ジロウのこと言ってます?
あ、そう言えばジロウ、私のこと「僕のなんで」って言ったらしいじゃない。
会わせない方が良いよね。
伝票はスマートに取り上げられて会計へ向かう。
喫茶店を出たら別々の道を行こう。
「あの、私こっちなんで、副社長はお車あちらですよね?」
「うっ……いや、ちゃんと見届けるよ」
「本当、大丈夫です、先に帰ってください」
「まさかこの後も別件入ってるんじゃないだろうな?」
「違いますよ!」
「俺はもう騙されないぞ」
「最初から騙してませんよ、人聞きの悪い」
あーだこーだ言い合ってるうちにジロウが迎えに来てしまった。
「椿さん?」と声を掛けてきた瞬間、副社長の顔色が変わる。
時計を確認して、ジロウは私の隣に立った。
「弊社の就業規則に関わってくるのでこの辺で良いですか」
直接、副社長に言ってのけた。
返してくださいね…とでも言わんばかりに。
「キミが送迎してるのか」
「申し遅れました、小川ジロウといいます、椿さんを担当してます」
「担当?」
「ええ、大切な社員ですので僕が責任持って送迎してますからご心配なく」
「あ、副社長、それではまた明日からも宜しくお願いします」