甘い蜜は今日もどこかで
第2章 【曖昧なカンケイ】
「あ〜えっと……ちょっとランチをテイクアウトで」
__こんな遅くに?休憩取れてなかったの?
「すみません、私の時間配分ミスです……」
__そっか、戻ったらゆっくり食べてくれて良いから
「はい、すみません」
サプライズするには苦し過ぎる言い訳だったか。
隣に立っていた男性客も携帯で話されていて自然と声が聴こえていたようだ。
私と喋っていると勘違いしたのか。
__マジで何処に居るんだよ、迎えに行くから
「え、いや、もう戻ります」
必死に止めようとしてたのに隣に居た男性客が「今日お前ん家行くから」って通話相手に言ったのを副社長が反応してしまう。
__てめぇ、何処のどいつだ!藤堂はうちの社員だ!手出したらタダじゃ済まねぇぞ!!
耳がキーンとなるほど声が大きくて近くに居たお客さんには聴こえていたと思う。
その男性客もびっくりしてこっち見てるし、私一人上司に怒られている客になっちゃったし。
「勘違いです、とにかく戻ります」
__あ、オイ!切るな!
と言われても切る。
モンブランを受け取り急いで帰る。
15分ほどで会社に戻り、副社長室をノックした。
怒ってるんだよね?
いや、そうでもないか。
ううん、怒ってるわ、これは。
「今度から外出する時は声掛けて」
「すみません」
「ランチも取れてなかったなんて、配慮が行き届いてなかった、こちらもすまなかった、明日からはなるべく同じタイミングで休憩を取ろう」
「わかりました」
「で、あの男の声は何?知り合い?家にまで呼ぶような相手なのか?」
事の説明を終えると耳まで真っ赤になって「それは、すまなかった」と穴があれば入りたい状態なんだろうなとは見当がつくけども。
「あと、私が見当たらないからといって鬼電してくるのもやめてくださいね?」
「何かあったんじゃないかって心配になるだろ?」
「どこに危ない箇所があるんですか?」
「現に社外だったし!びっくりした、アーびっくりした!」
あまりにも子供っぽくてもう堪えきれなくなり笑ってしまった。