甘い蜜は今日もどこかで
第3章 【どんなに焦がれても】
「頭ではわかってるけど……気持ちがすぐに追い付かなくなる、どうしたら良い?ねぇ、藤堂さん……教えてよ、抱き締めてキスしたくて堪らないよ、諦めの悪い男でごめん」
誰にも見せない弱い部分を曝け出して、繋ぎ止めたい想いが溢れ出ている。
全然隠しきれてないですよ。
すぐに伝えてしまわなきゃ気が済まない人なんですね。
「あの、この際ですので、はっきり言わせてください………今の状況で私がお答え出来るのは今の副社長では何も感じない、ということです………のし上がるんじゃないんですか?甘ったれてます?何の結果も出せない男じゃないはずです、前に啖呵切ったのもうお忘れですか?目の前の欲望に負けてどうするんですか、やれば出来る人なのに、ビシッと決めてくださいよ、誰よりも期待しているのは私ですから」
「うっ………ぐうの音も出ない」
「時々、違うお仕事でご迷惑をおかけすることもあるかと思いますが、フラフラしてるんじゃないんですよ?私が帰ってきた時にちょっとびっくりするくらい良い男になっててください」
こんな年上の人を丸め込むのは気力と体力勝負なのかも。
「幻滅した?こんな俺……」
「しませんから」
自惚れになるけれど、自分のことになると途端にダメンズになる副社長が少しだけ可愛く見えた。
「初めてなんだ、こんな気持ち」
「はい、そういうことにしておきます」
「明日、帰ってきてからで良いから声聴かせてくれないか?」
「明日ですか?あ……はい、22時以降になるかも知れませんけど」
「何時でも良い、かけてきてくれたら絶対に出るから」
「わかりました、それで、その……もう手解いて貰っても良いですか」
解くどころかギュッと握ったまま。
「最後にもう一回…」って引き寄せられ鼻の頭が触れる瞬間、また目が合って逸らせなくなった。
抗えなくする為に甘い空気を漂わせて。
良いよね、と許しを得たつもり…?
間一髪でパフッと手で口を覆った。
「聞き分けのない人ですね」
「うん、藤堂さんのことになると中学生みたいになっちゃうよ、止められなくなる……お願い、明日行くならキスで安心させて…?」