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禁断の夏合宿

第1章 臨時コーチ


「吉本先生、ご相談があるんですけど…」

職員会議を終えて
帰宅準備をしていると、
隣の席に座っている桜川教諭から
声をかけられた。

「いいですよ、なんでしょう?」

さあ、話を聞きますよとばかりに
桜川教諭に向き直った。

「いえ、ここではなんですから
少し場所を変えて…」

まわりを気にして
小声でバツが悪そうに顔をしかめた。


今夜は早めに帰宅して
先日に実施した抜き打ち試験の
採点をつけたかったのだが、
既婚者とはいえ、
校内一の美人教師のお願いならば
断るわけにはいかなかった。

いや、それどころか
美人の桜川教諭と
二人っきりで話せるチャンスなんて
早々あるわけではないので
吉本の顔は自然とニヤついた。


吉本恭介は都内の私立女子高で
化学を教えている教師である。

まだ教師になって数年で
一見では学生だと言っても
通用する若々しさだった。

桜川も同じ女子高の教師で
保健体育を教えていた。

学生時代は水泳の選手として、
都内ではかなりの知名度だった。

同じく学生時代に
水泳部だった吉本にしてみれば、
憧れだった有名選手と
同じ職場で机を並べることができたのが
夢のようだった。


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