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片恋は右隣

第2章 ワンナイトじゃないんですか



「綺麗んなってたから言いそびれたけど、高校まで一緒だった三上さんだよね。 店の眼鏡でやっぱりって。 おれのこと覚えてない?」

簡単に先手を取られた。
しかもリップサービスつきで。

返そうとした言葉が思わずどもった。

「あ、ああ、わ·····わたしも自信なくて? バレー部で、部長してたよね」

「まじで。 覚えてた?」

だからなんでそこで嬉しそうな顔をするかな?
とにかくこれは間違いだという意思を伝えよう。とわたしが一応の愛想笑いを作った。

「うろ覚え·····でも、倉沢さん結婚してるんだよね。 だから、こんなのはあんまり良くなかったよね」

「結婚? してないよ。 今フリー。 てか、先日別れたばっか」

「あれ? 指輪····してなかった·····?」

言われて、左手をよくみれば倉沢さんは指輪をしてない。

「普通に付き合っててもしない? ·····ああ、そっか。それなら気になるよな。 先に言っときゃ良かった」

「でも··········」

まごまごしてるわたしをしばらく見詰め、彼が困った表情で自分の片手を肩に乗せた。

「あー···どうしよっかな。 疑ってるなら、週末転入届出しに市役所行くから一緒にどう? デートのついでに」

彼の言ってる意味がよく分からなかった。
市役所でデート?
なんか催し物やってたっけ?
混乱してそんなことを思い巡らした。

「デート·····って? なんで?」

「とりあえず、これきりにしたくないから。 ちょっと運命的で感動したし。 三上さんは?」

「ま、前向きに考えるとそうだね。 けどずっと既婚者かと思ってて·····でもなんとなく、成り行きで。 あ、あと、そうそう。 席が隣同士で·····社内恋愛もどうかと思うし」

グイグイ来られると逃げたくなるのは自分の癖だけど、わたしは間違ったことは言ってないはず。


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