片恋は右隣
第4章 幸せになったらダメなんですか
雲間の光がオレンジ色の束になって降り注ぐ時間まで、わたしと倉沢さんは外やカフェで色々な話をした。
お互いの以前の会社や大学の話。
わたしがここに戻った理由や家族の話。
わたしには年の離れた姉がいる。
彼は弟と妹がいるという。
お互いになんとなく、「分かる」と頷いて笑った。
そうこうしているうちに、じきに夕食の時間になった。
じつは倉沢さんのことだから、週末はずっとベッタリするのかな、なんて思ってた。
ところが意外にそうでもなかったらしい。
「こっち帰ってきたばかりでやることあるからね」
わたしのマンションの前で断りを入れた彼にちょっと拍子抜けした。
けれども考えてみればそうだよね、と思い直す。
荷解きとか、まだあるんじゃないかな。
「これでも性格も体も好みの相手なんか、滅多にいないことぐらいは分かるよ。 この歳でグズグズしてたらあっという間におっさんだしさ」
別れ際にハア、と倉沢さんがため息まじりで呟く。
また耳がペタンって寝てるような気がした。
意味がよく分からなかったけど、そんな彼を慰めようと、倉沢さんの頭をなでてみた。
「そんなことないと思うよ」
自分はわんこバージョンの彼に弱いようだ。
そんなわたしに曖昧な笑みを返し、彼が帰っていった。
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