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片恋は右隣

第2章 ワンナイトじゃないんですか


同階のフロアには休憩室が二つある。
田舎のわりに福利厚生が整ってるのは大きな会社の支社ならではだ。
多少建物が古いのはネックだけれど。

「·······と、いうより。 元々関わりなかったもんね」

わたしはいつも人の少ない小さな方で休憩を取ることにしている。
誰もいない室内でぽつりと独り言をいう。

倉沢さん。 向こうは野球にバレーの運動部。
わたしは小学校から大学まで美術部の生粋の文化系。

お互い騒がしいタイプでもなかったけど、向こうはちゃっかり彼女もいたし。
わたしは家が厳しかったのもあり、いわゆる都内で大学デビューというやつだ。


「三上さん。 倉沢さんの歓迎会どこにしましょう?」

「·····なんでわたしに訊くの」

休憩室で話しかけて来たのは四つ後輩の男性だった。
後輩、といっても中途入社のわたしと同期でもある。

「三上さん、引き出し多いですから。 また一人飲みで良いお店見つけました?」

今どきの子らしく要領がよく、懐いてくるためによく話をする。

「一人飲み限定? 花邑くんって失礼だよね」

「そしたらまた誘ってくれないかなあって」

彼の率直な受け答えに苦笑を返した。


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