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もうLOVEっ! ハニー!

第2章 歓迎と予感


「私は家族も友達もいなかったんです。父も母も私と言葉を交わしたりしませんでしたし、姉には目覚まし時計としてくらいしか見られていませんでした。学校では毎日のように机が隠されて、制服が盗まれて、楽しいことなんて一つもない生活でした。そこから抜け出したくて、ここに来ました」
 短いですね。
 こんなまとめ方。
 でも、これ以上に言葉が続きませんでした。
 数瞬の沈黙。
 そのあとに、私は隆人さんの胸元にいました。
 ぎゅーっと抱かれてました。
 頭を撫でられながら。
「よく言えたね。歓迎するよ、かんなちゃん。その過去も丸めて全部歓迎する」
 そろそろと隆人さんの背中に手を回す。
 縋るように。
 父親に。
 あるべき父親像に縋るように。
「あ、りがとう……ござい、ます」
 今日は泣いてばかりですね。

 十時を過ぎて、奈巳さん、亜希さん、ルカさんの三人は部屋に戻りました。
 少し落ち着いた私は美弥さんとソファに座ってプリンを楽しんでました。
「第五ラウンドでお開きは早かったわよ」
 不満そうに零す鳴海を介抱しながら汐里が諌める。
「毎年そんなものだろう?」
「そうだよ、なる。それにこれは暴露を楽しむゲームじゃあない。暴露を受け入れるための行事なんだから」
「そりゃ、かんなちゃんには良かったかも知んないけどさ。私みたいなひねくれもんは他人の秘密は蜜の味なのよ」
 腕まで赤くしてとろんとした目で。
 それでも強気に。
 けれどだんだんと眠気に耐えられなくなった彼女は、隆人に背負われて医務室に連れて行かれた。
 汐里も同伴して。
 残ったのは六人。
 随分部屋が広く感じます。
 後片付けは済ませてあったので、のんびり語らうお時間になってました。
「美緒さんの時はどんな感じだったんですか」
 美弥といいかけてしまう。
「んー? ああ、歓迎会ね。そうだにゃー……ボク以外の三年がいたら良かったんだけど。あんま覚えてないんだよね」
「オレらは去年を強烈に覚えてますけどねー」
 余ったシャンパンを独り占めして楽しむこばるが言う。
「美弥先輩の青の引き率が異常に高かったせいでカオス状態だったもんな、三陸?」
「……思い出させんな」
 さっきの元カノ話からずっとテンションが下がっている陸さんは、まだカウンターで端の方でうなだれていた。

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