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もうLOVEっ! ハニー!

第20章 秘密のシャーベット


 声をかけようと口を開けた賢を尚哉が引っ張る。
 そうだ、アリスのことは尚哉さんにも話してましたね。
 なおさら罪悪感でジリジリする。
「いつも仲ええな、お前ら」
 尚哉がなんで声かけんだよ、と眉を歪ませる。
「曲作ってんですよ。公開したら是非見てくださいね」
 明るい賢だが、失恋した親友を気遣って踵を返した。
 これから夕飯でしょうか。
 降りていく足音を聞きながら、岳斗が解錠するのを待つ。
「俺の部屋初めてか。まあ、映画見るなら呼ぶつもりやったから。はい、どうぞ」
 ガチャリと開いた扉に、少し覚悟を決めてから足を踏み出す。
 中に入ると、ああ、この人の匂いの部屋だと浮き足立ってしまう自分もいた。
 キッチンに並んだ香辛料、壁にかかった映画のポスターは有名なミュージカル。
 まるで心の中に招かれたように、部屋は内面をさらけ出す。
 鍵が閉まる音に、びくりとトラウマが顔を出す。
 やめてやめて、今は貴方の番じゃない。
 ここは二階。
 三階じゃないんだから。
「ごめん、俺またしょうもない嫉妬しとるわ。でも、かんなが部屋来てくれて普通に嬉しい」
 優しく後ろから抱きしめられて、暗い記憶がすうっと消えていく。
「いえ、私こそ、話せてなくて……」
 抱擁に少し力がこもる。
「けど、つばるには、話したんやね」
 ああ、今度ははっきりと部屋が照らされる。
 カーテンは黒い暗幕。
 大きなテレビにはカバーがかけられ、壁の棚には沢山のCDとDVD。
 ベッド脇に転がる寄せ書きの入ったバスケットボール。
 窓からこの心は覗けない。
 耳に唇が当たる。
「……アリスともキスしたん?」
 もう予想はついてると。
 その問いはただの確認作業。
 頷くことしか出来ず、言葉を喉は紡がない。
「そか。こういうの?」
 ぐい、と顎を挟んだ手に上を向かされ唇が重なる。
「それとも、こっち?」
 舌が唇をなぞりながら口内に入り込む。
「んんっ」
 うなじが痛いほど顔を上げて、でも口の中は気持ち良くて息が漏れる。
 顎を解放されると、手がすっと降りて、胸を持ち上げるように掴まれる。
 ずれた下着の隙間から、指が乳首に当たる。
「っひ、やだ」
 思わず口を離して、胸元の手を止めようと両手で掴む。
 岳斗はあっさり手を離して、口元の液を手の甲で拭った。
「どっち?」
 ニコリとカメラの前の笑顔。

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