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どこまでも玩具

第12章 晒された命

 
 朝霜が降りている。
 寒さに手に息を吹きかける。
 肩をさするが、セーター生地のせいかバチバチしてしまう。
「なんなのよ~。こんな時間に呼び出してさぁ」
 有紗は広場の時計台を見る。
 八時。
 人通りはまばら。
「仁野さん?」
 睨むように声の主を振り返る。
「遅いわよ」
「ごめんな」
 蒼いジャンパーに、黒いキャップ。
 デニムのパンツ。
 黒いスニーカー。
 なかなかセンスは悪くない。
「何の用なの、一体。西雅樹」


 風が吹く。

 冷たい風が。

 今日はクリスマスイブ。

 私は非常にご機嫌だ。

 今夜こそ、センセに言いに行く。
 この男の用件も大したことはない。
 そんな予感に包まれていた。

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