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どこまでも玩具

第3章 枯らされた友情

 口火を切ったのはアカだ。
「放課後六時にね。七時になっても連絡来なきゃ向かうから」
 二人は同時にフェンスから離れる。
 キィ。
「……ただ、瑞希への行為を止めさせれば良いんだよな」
「……うん」
 アカは、胸に渦巻く不安を口に出さずにぎこちない笑みを浮かべた。


 カリカリ。
 夕日がカーテンに溶け込む逢魔が時。
 類沢は書類を整理していた。
 カリカリ……。
「類沢センセ」
 その手が止まる。
「……やぁ、どうかしたの?」
 オレはドアを閉める。
 類沢の目が少しだけ鋭く光った。
 近くのソファに乱雑に鞄を投げ、彼の机の前に立つ。
「怪我でもした?」
 何にも疾しいことの無い表情。
 瑞希を犯して、そんな態度で何故いられるんだ。
「オレじゃねえんすよ」
 パラッ。
 手元の資料を捲る。
「……あぁ、金原圭吾君ね。まだ名前を覚えて無くてさ」
「じゃあ、宮内瑞希を知ってますか」
 一瞬の沈黙。
 冷や汗が首筋を流れる。
 こんなに暑いのに。
 いつの間にか、オレは緊張していた。
「……保健委員だからね」
 その眼も嘘は吐いてない。
 どうする。
 下手すれば、やられる。
 真っ直ぐ詰め寄るべきか。
 遠回しに追い詰めるべきか。
「で? その親友の金原は何しに来たの?」
 ゾワリ。
 類沢がペンを置いた。
「なんで……親友って」
 カタン。
 相手も立ち上がる。
 座ってるときは気付かなかった、その存在感の大きさに圧倒される。
 身長は百八十を超える程度だろうか。
 薄く化粧をしているのか、白い肌が薄暗い保健室に浮かび上がる。
 白すぎる白衣。
「呼んでたから」
「あ?」
 声が震える。
 机を回って類沢が近づく。
 オレは一歩下がった。
「ずっと……金原助けてって呼んでたから」
 頭が真っ白になる。
 気づけば拳を振り上げていた。
「てっめえ!!」
 だが、容易く受け止められる。
 ツンと消毒の臭いがした。
「……教師を殴るなんて問題児だね」
 ゾワ。
「離せ」
 甘い香り。
 瑞希もこれを嗅いだのだろうか。
 六時のチャイムが鳴る。
 オレは我に返って類沢を払いのけた。
 微笑みながら見下ろす相手に、寒気が収まらない。
「優しいね、圭吾は」
 親しげに名前を呼ぶ。
「瑞希の為に来たんだろ」
「知っててその余裕かよ」

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