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雨とピアノとノクターン

第3章 出会い編:罠

 朝早くの出来事だったため、頼りになる教職員もまばらだった。もしもあの渡り廊下で、偶然僕がプール事故について聞かなければ、鳴海を失っていたかもしれなかった。
 彼はそのまま、救急車で病院に運ばれ、一日だけ入院となった。
 プールは午後、業者のメンテナンスが入ると言っていた。ところが予定が早まったことはごく一部の人間しか知らされていなかった。ならば、使用禁止の札や張り紙などがなされていたはずだが、それもなかったのだ。
 いくら鳴海でも、それを無視してまでプールに入水するだろうか…?僕は濡れた制服を更衣室で取替えながら疑問に思っていた。

 何者かが…仕組んだとしか思えなかった。
 僕のせいか…?
 どす黒い権力争いの陰謀に、僕が鳴海を巻き込んでしまったのではないだろうか…?
 僕はショックのあまり、しばらくその場で座り込んでいた。

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