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雨とピアノとノクターン

第7章 文化祭編:ラストダンス

そして今夜も佐屋が、ヘロヘロになって帰って来た。
「…しっかりしろー?佐屋ー?…ったく、玄関で寝るなー!起きろー!」
 よっこいしょ…と、佐屋の腕を肩にかけて彼を担ぎながら、鳴海は佐屋をソファーの上で横に寝かせた。
「…なぁ、佐屋?」
「……ん?………鳴海?…何?」
「…例えばさ、佐屋とオレがラストダンス踊るって、変かな?」
「…………」
「くそっ!……黙ってスルーするほど変なのかよ?佐屋なら賛成してくれるって思ったのに…」
 鳴海が佐屋の鼻を指で摘んだ。すぅ…と彼の静かな寝息が聞こえた。

 ちぇっ…また寝ちまいやがったか…。

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「…で?鳴海はアイツと踊りたいわけ?」
バーLucusのマスター、タカシはグラスの輝きを確認しながら、洗って乾かしたそれを戸棚に片付けていた。
「……まぁ…そうかな」
 鳴海は恥ずかしそうに指でこめかみを掻いた。
「いいんじゃない?男同士、ばっちり目立つし♪」
 タカシの両目が弧の字型になって、さも可笑しそうだ。
「くそっ!!だからマスターに話すのってイヤだったんだ」
「まぁーまぁー、そう怒りなさんな!ダンスなんて自己満足なのっ!誰かに見られたいから踊るんじゃなくって、一緒に踊りたいから踊るんでしょ?」
 ふざけているようでいて、意外とタカシの言葉は的を得ている。

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