テキストサイズ

Kiss

第6章 dear

「ふふ。ダメだよ、龍」
 亜廉が額をつける。
 近すぎる距離で囁いた。
「心だって逃がしてあげないから」

 縛られた手をギチギチと動かす。
 全然抜けない。
「せん……っぱい、外して」
「いいね~。メイド服でもがく龍。ポスターにしちゃいたいくらい可愛い……特大サイズで」
 フリルが頬に当たる。
 レースの胸の布が擦れて痛い。
 散々弄られた突起は元に戻らない。
 ますます紅く尖る。
「はッッ……大体……どこからこんな、もん」
 悪趣味なメイド服。
 隠すべき場所がぜんぶ網。
 意味がない。
 亜廉が携帯越しに眺める。
 シャッター音が響く。
「うん? 今付き合ってる彼女がコスプレえっちにハマっててね、ナースとかスク水とか色々部屋に置いていくんだよ。全然つまんなかったんだけど、まさか龍が着る日がくるなんてね……幸せ」
 満面の笑みを睨み付ける。
 同時に悪寒が走る。
 コレ、女が着てたヤツってこと?
 しかも先輩とヤった女が?
 気持ち悪い。
 脚を擦り合わせる。
 この黒網タイツもむず痒い。
 亜廉はやっと満足したのか携帯を傍らに置き、馬乗りになる。
 がくんとベッドに仰向けにされた。
「ナニか不満そう」
「べつに……」
 顎を掴まれ顔を固定される。
「ねぇ、龍。ボク本当に龍にメロメロだからさ、あんまし痛いことしたくないの。このロープだって縛りたくなかったんだけど……暴れると危ないでしょ」
 もう抵抗なんてする気はない。
 ただこんな格好にさせられて大量に写真撮られれば誰だって不機嫌になるってこと、わかんないかな。
「先輩がどう思ってるか知りませんけど……俺、やり方知らないし……多分できないですよ」
 亜廉が目を見開く。
 それから吹き出して、俺の胸元に崩れて笑い転げた。
 吐息がくすぐったい。
 身をよじる俺に笑いながら囁く。
「龍って無意識に煽るのプロだね」
「なっ」
「安心して。ボクも龍の体が目当てとかじゃないからさー。今日は激しくしないし」
 不安しかない。
 なんて言った?
 今日、は?

ストーリーメニュー

TOPTOPへ