
ふざけた奴等
第3章 俺が俺であいつも俺で
勢いよく開いた扉が壁にぶつかり反響する。
食後の緑茶を飲んでいた小太郎はその音に吹き出してしまった。
ボタボタ垂れた口を拭いながら呆然と僕を見つめたが、すぐに傍らのティッシュに手を伸ばした。
「部屋に入るときは……げぼっ、ごほっ。マナーよくって習ってないのかりーやん!」
「なんで普通に食事しちゃってんのありえないこたろん。本当ペガサスだよね、お前」
「なんでだよ。見ろこれ。早雪ちゃんが作ってくれたんだぞ。やばうまカリーライス」
こいついつもカレー食べてないか。
「なぐっちは?」
二メートルはある大きな木のテーブルの周りには、小太郎しか腰かけていなかった。
「なんか、早雪ちゃんが話したいことあるって行ったあとに、二人で出ていったはず」
鼻をかんで、ずびずび言わせながら答える。
「一人で!?」
「話聞けよ。早雪ちゃんと。あ、そうそう。金次さんに会ったか?」
逆鱗が人間に存在するならきっとうなじ辺り。
わかりやすく毛が立つのを感じるから。
「いーい? こたろん。あれは金じゃない。偽者だ。ここがなにかはわからないけど、僕らがいるべき場所じゃない。あの早雪とかいうガキに帰る方法聞き出して帰るよ。なぐっちの元に行こう」
「なんで帰る必要があるんだよ? 一泊くらいしてこうぜ。早雪ちゃんもそう言ってたし」
ダメだ。
ショタの言葉に問答無用で騙されてる。
部屋を見渡し、出口らしき扉を開ける。
視界に飛び込んできたのは青々と樹を繁らせた山々。
その中腹辺りに小屋は位置していた。
周囲にも同じような建物が並んでいる。
「知念……田舎過ぎる」
「どこ行くんだよ。りーやん!」
流石に席を飛び出して小太郎が駆け寄る。
「早雪はどこ行ったの?」
「……なんか、西港とか」
どこだよそれ。
くるりと部屋に戻り、金を呼ぶ。
「如何なされましたか」
先程までの険悪な空気などなかったかのような態度に些か気を削がれながらも、とりあえず由一の居場所に案内するよう頼む。
「しかし……」
「爺。いや、銀。お前は銀だ。偽者だから。でもお前の主人は僕だ。今すぐなぐっちのところに連れていけ」
金は苦く笑い、軽くお辞儀をしてコートを羽織った。
「畏まりました」
