
ふざけた奴等
第1章 鹿は馬より速いはず
「あれ。こたろんは?」
放課後掃除から戻ると、教室にはりーやんしか残っていなかった。
学校指定ではないブランドの鞄ぶらぶらさせて、黒髪のマッシュルームカットを弄りながら。
一応俺らの中ではモテるんだよな。
こいつ。
金持ちだし。
韓国ブームは終わってんぞとしか思わないが。
「後輩に呼ばれて出てったよー。十五分で戻るってさ」
「告白?」
「かもねぃ」
マジか。
あのバカもか。
「でもあいつソッチ興味ねえじゃん」
「あ、後輩は男だよ」
「マジか。それはありだな」
ため息を吐いて机に座る。
携帯を取り出してゲームを立ち上げる。
いつだっけ。
あいつがカミングアウトしたの。
「おたまー」
能天気バカ。
能天気ボイス。
「おまたーだろ」
「えろいじゃん」
「で、後輩は?」
「お気に入りの美少年くんがねー、可愛くってねー、ちょっとねー」
手を組んでくねくねと。
本気でうぜえ。
「食ったの?」
「りーやん。いたんだ」
「いたわ」
「ん。まあ、好かれるのは嬉しいから」
……。
終わりかよ!
