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ジェンダー・ギャップ革命

第4章 享楽と堕落の恋人達




 生きるだけで息も切れそうだった頃、織葉に出逢った。愛津が辛い思いをした時、彼女が側にいてくれた。

 それらは、後付けだ。彼女にこだわる理由はいらない。いらないのに、好意だけで彼女を追うには、愛津はあまりに臆病だ。


 従って、愛津が織葉を見かけたのは偶然だ。

 英真達と昼食を平らげて、腹ごなしに近所を散歩していた時だ。公園の木陰にいた織葉の斜め後方の柵を、男が一人、ひょい、と跨ぎ越えてきた。


「織葉ちゃん、聞いてくれ!」


 愛津がスマートフォンを握り直したのは、今朝の英真達の話が頭の隅に残っていたから。斎藤が通報しなければならないような行動を起こすとは思い難いが、思わず身構えるほどには、彼女らに火の粉を振らせた後腐れは強烈だった。


「玲亜ちゃんとの結婚は、見送ることにした」

「何言ってんの!?」

「すまない!」

「彼女は、何て言ってる?」

「まだこれから……。織葉ちゃん、でも、ごめん。今でも織葉ちゃんを愛してる。四年前から、ずっと。力になりたい。迷惑で、困らせてるとしてもだ。急に会えなくなるって言われて、俺、自分の悲しさや寂しさばかり、織葉ちゃんにぶつけてしまった。好きだった、守りたい、一生愛し抜くからって、必死に俺、自分のことで頭いっぱいで……。神倉、えれん……さん?本当にお義母さんの手伝いだけが理由?俺を選んでくれなくて良い、ただ、──…」

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