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ジェンダー・ギャップ革命

第2章 唾を吐く貧民


 政界入りして血税を啜るという妄想は、制約だらけの生活に光るひと握りの楽しみだった。


 どうせ誰もが自分のことしか考えていない。長いものに巻かれてばかりの人生は、自分に相応しくない。被支配層から支配の立場に転身するには、選挙に出る他にない。そのための資金は借り入れてでも、当選すれば問題ない。

 そう思案していた2年前、「清愛の輪」のビラ配りをしていたえみるが、自宅に帰る途中だった愛津に声をかけてきた。


「良かったら読んでおいて下さい。あとお時間あったら、お話も聞いていって下さい」


 若い女達の人だかりが出来ていた。当時は彼女の名前も知らなかったが、愛津からすれば、えみるも若いどころか子供も同然だった。


 …──全ての女性が自立する社会作り。


 見飽きたような綺麗事の印字された書面を突き返すのも面倒だったし、コネや財力だけで支配層にいる人間の話を聞いていられるほど、暇になった覚えもなかった。
 つまり政治に無関心の愛津が足を止めたのは、えみるの桁外れの幼さではなく、珍しい層の人だかりでもなく、彼女らの中心でマイクを準備していた女の容姿に惹かれたからだ。やはり若く、しかも目を疑うほどの美人。

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