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終焉のアルファベット

第5章 追放と抵抗

フィレンツェの古い町並みが、夕暮れ時の神秘的な紫とオレンジ色の交錯する色彩で繊細に塗りつぶされると、高く突き立つタワーから広々とした広場まで、一面のレンガ色の建築物群は、夕陽に照らされて深みのあるオレンジ色に染まり、まるで過去のマスターが描いた一枚の大油絵のような風情を醸し出しました。

その日も例外ではなく、アルノ川が穏やかに流れる街の隠れた角にひっそりと建つ、木製の扉が緑色の苔に覆われた古風な酒場「ルナ・アンティカ」の奥部屋で、筆を操るヴィンチェンツォ・ディアモンディと彼の信頼できる仲間たちはこっそりと集まり、深い交流を持っていました。ローマからの非情な追放をうまく逃れ、芸術と自由の炎を消させないという共通の目的を胸に秘めて、彼らはこの静寂というベールの中にひそかに息づいていました。

詩の海を渡り、思想を形成する賢者とも称されるエリオが、数世紀の歳月を経た樫の木製のチェアから力強く、しかし優雅に立ち上がると、その瞬間、部屋全体が微かに震えました。それは古松の床板が軋む音のせいではなく、エリオの存在そのものから発せられる力が、彼の周囲の空間を揺らしたからでした。その震えは一瞬で消え去り、部屋は再び静謐な状態に戻りました。しかしその静寂は、エリオの存在が部屋の全てを占めていることを余すことなく物語っていました。

エリオは部屋の一角に静かに立てられた、錆びた銅のキャンドルスタンドの灯りを背にして立ち、その深淵から湧き上がるかのような声で仲間たちに語りかけました。「フィレンツェ、この古代から息づく歴史を感じさせる街こそが、我々が新たな活動を開始するのに適した場所だ。窓を開けてご覧。月明かりが古石畳を柔らかく、かつ力強く照らし出している。それぞれの街角で、芸術家たちは独自の創造の火花を放っている。この場所なら、我々も自由に交流し、新たな芸術の種火を灯せるだろう。」その言葉は、銅のキャンドルスタンドの灯りと共に、部屋中に満ちていきました。

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