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終焉のアルファベット

第1章 輝きの発見

フィレンツェ、その石畳の街並みがルネサンスの絢爛とした煌きを放つ時代。学問の進歩と芸術の洗練が街の至る所で交差し、創造の風が曲がりくねった路地裏から広大な広場まで、風と共に絶えず吹き抜けていました。そんな刺激溢れる芸術の渦中で、非凡な才能を秘めた青年、ヴィンチェンツォ・ディアモンディが活動していました。

ヴィンチェンツォの家は、フィレンツェの雑踏から一歩引いた、古びた石畳の小道の突き当りにひっそりと存在していました。彼の家族は、芸術とともに息づく生活を深く愛し、彼の父親は市民に広く認知され、賞賛を浴びていた腕利きの彫刻家でした。彼の工房は家の奥庭にひっそりと広がっており、そこにはまだ生命を吹き込まれる途中の神々しい聖母マリアや聖人達の石や木の彫刻作品が精巧に散りばめられていました。ヴィンチェンツォは、幼少期から父親が巧みに物質を形作る職人としての仕事に、無尽蔵の興味を抱いていました。彼は父の光と影が交差する彫刻工房で、多くの時間を過ごしました。木片や形のない石が、まるで生命を得るかのように芸術作品へと変貌していく瞬間を、彼はじっと見つめていました。その中でも、一見冷たく無生命な石が、父の手により熟練の技術と微妙な感触によって、息を呑むほどの美しい彫刻に生まれ変わるその過程は、彼にとってまるで魔法に見えました。その様はまるで父が神秘的な力を持ち、それが魔法のように物質を操るかのようでした。この彫刻という芸術への彼の興味は日々深まり、芸術家としての才能の種が彼の心の中に着実に育まれていきました。

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