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終焉のアルファベット

第6章 ブルーム・レジステンツァ

真夏の午後、ヴィンチェンツォのアトリエに一人の見知らぬ男が訪れました。その男は壮年の風格を纏い、緊縮した黒髪を後ろで結び上げ、頬には深い皺が刻まれていました。その瞳は世界を見てきた叡智と経験を秘めており、眼差しは力強さと同時に温和さを湛えていました。

彼の名前はジローラモ、フィレンツェの都で一見平凡な市民のように見える彼は、実は教皇ルシウス三世の保守的な政策に反抗する秘密組織「ブルーム・デ・ラモンテッソ」のリーダーだった。この組織は、教皇の権威に対抗するため、都の裏通りや地下室で密かに活動していました。熱烈な信者たちが集まり、教皇の不正を糾弾し、民衆を啓蒙することを目指していました。彼らは教皇の保守的な政策に対し、進歩的で開放的な社会を構築しようと誓っており、そのためにヴィンチェンツォの芸術を強力な味方として見ていました。

「ヴィンチェンツォ、あなたの作品は人々の心を捉え、新たな考え方を生み出す力があります。その力を、我々の抵抗運動に使ってはくれませんか?」ジローラモの声は静かでありながら、その言葉には力強さが籠もっていました。ヴィンチェンツォは彼の提案に対して深く思索しました。彼の作品が教皇から異端視され、その存在が封じられようとしている事実は重々知っていました。しかし、その一方で、自身の芸術が持つ力を認められ、それを社会に影響を与えるために活用するという提案に心は躍りました。だがそれは、自分の芸術を政治的な手段として使うことに他ならない、という葛藤もまた胸の中で渦巻いていました。

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